3年生では履修した計量経済学や財務情報処理などからデータ分析に必要なスキルを学びました。そこで、勉強した成果として実証分析に挑みました。以下はそれをレポート風にまとめたものです。
こちらから分析をするにあたって用いたExcelファイルを見ることができます。
消費関数の推定とF検定による構造変化の実証分析
名古屋市立大学 経済学部 会計ファイナンス学科 3年
氏名:山口大輝
1. はじめに
2020年に感染が確認された新型コロナウイルスは日本に多大なる影響を与えた。特に、経済活動にも影響が及んだと考えることができる。そこで本稿では、コロナパンデミックによる経済消費活動の変動が起きたか否かの分析を行いたい。
2. モデル:消費関数
ケインズ型の消費関数をモデルにする。
RC_i = β_0 + β_1 * RY_i + u_i (1)
β_0 > 0, 0 < β_1 < 1
ここで、RC_i は i年の実質消費、RY_iは i年の実質所得である。上式のβ_0は所得がない状態でも生活のために必要な消費支出を表し、基礎消費と呼ばれる。β_1は限界消費性向で、所得が1単位増加したとき、消費額がβ_1単位増えることを示す。本稿では(1)のモデルを推定する。
3. データ
推定に使用したデータは次の通りである。まず、実質消費RC と実質所得RY には、内閣府『国民経済計算』から、2014年から2024年の四半期GDP実額より、実質民間最終消費と実質国民総所得を使用した。コロナウイルス感染が日本で確認された2020年から2024年までのデータ量は4年と短いため、データ量を確保するために今回は四半期GDP実額を用いて2015年から2024年まで40期間の四半期データを使用した。データの基本統計量を表1に、時系列の推移を図1にまとめる。
表1 基本統計量
RC | RY | |
平均 | 297201.74 | 569270.26 |
標準偏差 | 6050.94 | 11062.59 |
図1を見ると、2020年始めにRY, RCともに大きく減少していることが分かる。2020年を機に、日本の経済活動に変化が見られたと考えることができる。2019年の10-12月にもやや減少しているが、これは消費税が2019年10月以降に軽減税率8%及び 標準税率10%と変化したことによるものであると考えられる。
図1 時系列推移
4. 推定結果
推定結果は以下のようになった。
RC_i = 98661.89 + 0.35RY_i (2)
係数 | P値 | |
β_0 | 98661.89 | 0.02 |
β_1 | 0.35 | 0.00 |
有意水準5%でp値を用いた推定パラメーターの有意性の検定を行う。検定する仮説は以下の通りである。
H_0 :β_i = 0 H_1:β_i ≠0 ( i = 0, 1)
i = 0, 1のときもp値が0.05を下回っているため、帰無仮説H_0を棄却できる。特に、β_1に関しては消費は所得に影響を受けていることが分かる。
ここまで、2015年から2024年まで10年間の四半期データで消費関数を推定してきた。しかし、消費者の行動は2020年のコロナパンデミックを境に変化したと考えられるので、構造変化の検定を行う。2020年からすべてのパラメーターが変化する可能性のあるモデルは、以下で与えられる。
前半:RC_i = α_0 + α_1 * RY_i + v_i (i = 2015.00, 2015.25 , … , 2019.75)
後半:RC_i = γ_0 + γ_1 * RY_i + v_i (i = 2020.00, 2020.25 , … , 2024.75)
ここで検定する仮説は、以下で与えられる。
H_0:α_0 = γ_0, α_1 = γ_1 (構造変化なし)
H_1:H_0ではない を有意水準5%で検定 (5)
山本(2022)よりF検定量は、制約の数がG=2,H1モデルのパラメーターの数がk=4より、
F = ( SSE_0 – SSE_1 / 3)/(SSE_1 / 40-4 )
として計算される。ここで、SSE_0はH_0モデルのもとでの残差二乗和、SSE_1はH1モデルのもとでの残差二乗和である。H_0モデルのもとで残差二乗和を求める際に、前半と後半を同時に記述するモデルを考える必要があるため、以下のように考える。
RC_i = α_0*C + α_1 * RY_i + γ_0*C + γ_1 * RY_i + v_i
ここでいうCはダミー変数であり、以下のような表をもとに回帰分析を行った。H_0モデルを回帰分析する際には赤色の個所を目的変数、緑色の個所を説明変数とした。H_1モデルを回帰分析する際には赤色の個所を目的変数、黄色の個所を説明変数とした。

このF統計量はF(2, 36) 分布に従い、有意水準5%の棄却域の臨界点は3.26となる。また、推定結果から、SSE_0は847393500.10, SSE_1は265851487.80となった。したがって、
F* = ( 847393500.10 – 265851487.80 / 3)/( 265851487.80 / 40-4 ) = 39.37
である。F* > 3.26 より、帰無仮説は有意水準5%で棄却される。そのため、2020年に有意な構造変化があったといえる。
5. おわりに
本稿では、消費が所得に依存するか否か、また、コロナパンデミックが起きた2020年を境に消費行動に変化が生じたか否かの分析を行った。コロナウイルスが流行したことにより、2020年には消費行動における構造変化が確認された。
参考文献
[1]山本巧(2022)『計量経済学 第2版』, 新世社
すばらしい。力作ですね。
私も学部時代に消費関数論争(恒常所得仮説とか、ライフサイクル仮説)を勉強して、計量分析のレポートを書いたことを思い出しました。
ミクロなデータが必要になるので、かなり手間がかかりますが、次は、行動経済学的なアプローチ(マーケティングサイエンスとも)をデータ分析に取り入れてみると面白いと思います。
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